第11章

一行は江原家の別荘へ戻った。

江原司は安野香苗に気づかれないよう動き、そっと安野月子の部屋へ入った。月子はベッドに腰かけ、黙ったまま涙をこぼしている。そんな姿を見た瞬間、胸がきゅうっと締めつけられる。

「……なんで薬、塗ってないんだ」

白かったはずの指は、汚れた血でべったりだ。江原司は眉を寄せ、救急箱を引っ張り出す。消毒液と綿棒を取り、傷口を丁寧に拭おうとした。

「……あの女が戻ってきたら、もう私のこと心配してくれないんだ」

月子は彼の手を避けると、腕を回して首にしがみついた。勢いのまま抱きつき、拗ねた声で甘える。

「ねえ……あなた、まだあの女に気持ちがあるの?」

江原司は困っ...

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