第110章

翌朝。

安野香苗が検査を終えて病室へ戻ると、付き添いの介護士が「一人で退屈しないように」とナースステーションから車椅子を借りてきた。

『安野さん、外を少し散歩しませんか。私が押しますよ』

その言葉に、安野香苗の目がぱっと輝く。

『うん、行く!』

病室に閉じ込められているみたいで、身体までカビが生えそうだったのだ。少しでも外の空気を吸えるなら、それだけで救いになる。

介護士がベッドから降ろして車椅子に座らせ、上着を一枚かけてから廊下へ出る。

扉の前に立っていた護衛も、無言で後ろについた。

藤原京也から「安野さんの安全は最優先で」と念を押されているのだろう。

天気は上々。介護士...

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