第114章

早村千佐子は言い終えるなり、いかにも面倒くさそうな顔でその場にどかりと座った。

安野香苗は目を細め、千佐子の表情をじっと読む。――本気なのか、芝居なのか。判断がつかない。

少し迷った末、香苗は小さく頷いた。

『分かった。今ここで和解書を書く』

千佐子が何を企んでいようと、香苗には賭ける余裕がなかった。

紙とペンを取り出し、香苗は千佐子の目の前で和解書を書き上げていく。

数分後、書類は完成した。

香苗がペンを置いた瞬間、千佐子は勢いよく立ち上がり、ずかずかと近づいてきて、その和解書を奪い取ろうと手を伸ばした。

だが香苗のほうが早い。さっと背中へ隠す。

『離婚協議書は?』

こ...

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