第116章

『うん、分かった』

 電話を切ってから、安野香苗はようやく気づいた。

 ――なんだろう。今の自分、藤原京也に管理されてるみたい。

 退院するだけでも、相手の「許可」が要る。

 その感覚が、妙に新鮮で。

 けれど、不思議と嫌じゃなかった。

 退院手続きを済ませたあと、香苗は幼稚園へ向かい、翔太を迎えに行った。

 今日退院することは、あえて翔太に言っていない。

 だから園の門で香苗の姿を見つけた瞬間、翔太は目をまん丸にした。

『お母さん!』

 小さな体が弾丸みたいに突っ込んでくる。

 けれど、抱きつく寸前でぴたりと止まり、心配そうな顔をした。

 香苗はその意味を察して、迷...

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