第12章

彼女がそう言っても、江原司はなお半信半疑のまま、手を上げて香苗の手首をぎゅっと掴んだ。

「それで? 医者に夫婦生活はダメって言われたのか。それとも……もう気持ちが変わったのか?」

握力が強すぎて、一瞬で手首に赤い痕が浮かぶ。

痛みに眉をきつく寄せた香苗の冷えた瞳に、うっすら涙が滲んだ。

被害者ぶって責め立てるその口ぶりが、滑稽でたまらない。

浮気しているのは、あんたのほうでしょう。

安野香苗は睫毛を落とし、苛立ちを込めて手を振りほどこうとする。

「江原司……私をそんなふうに疑うの? 本当に失望した。五年間、私が毎日毎晩どこにいたと思ってるの。精神病院に閉じ込められてたのよ。私が...

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