第121章

安野香苗の声は氷みたいに冷たく、棘を含んでいた。

子どものためでなければ、江原司とこんな食事など最初からする気はなかった。

今この男と同じ空間にいるだけで、吐き気がする。

江原司はそれまでの柔和な表情をゆっくりと沈め、まっすぐ香苗を見据えた。

『香苗。君ほど頭がいいなら、今日の俺の目的くらい分かるだろ』

その瞬間、江原司は仮面を脱ぎ捨てた。

香苗はこの二日で起きたことを思い返し、すぐに察する。

『子どもを盾にして、私に何かさせようなんて思わないで』

江原司は椅子の背にもたれ、余裕ぶった口調で続ける。

『香苗、分かってるだろ。俺は藤原京也と、石上海人との案件を取り合ってる。君...

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