第124章

『安野香苗、明後日はお前の妹の誕生日パーティーだ。忘れずに家へ戻ってこい』

電話口から聞こえてきたのは、安野弘人の命令口調だった。

安野香苗は手元の仕事を捌きながら受話器を耳に当て、ふっと冷笑する。

『私が帰って、安野月子の主役を奪ったらどうするの?』

言い終えた瞬間、向こうで安野弘人が言葉に詰まった気配がした。

香苗は小さく笑い、淡々と告げる。

『安心して。安野月子の誕生日なんでしょ。そっちが私にちょっかい出さない限り、私も騒がないから』

安野弘人は自分が一枚上手であしらわれたと気づいたのだろう。苛立ったまま、ぶつりと通話を切った。

耳に残るツーツーという音に、香苗は眉を上...

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