第131章

安野香苗が立ち去ろうとした瞬間、江原司の顔色がさっと変わり、反射的に彼女を引き止めようとした。

一歩、踏み出したところで――男の視界がぐらりと揺れる。目の前が真っ暗になった。

次の瞬間、江原司はそのまま前のめりに床へ倒れ込み、意識を失った。

物音に気づいた安野香苗がちらりと振り返る。けれど表情は動かさないまま、何事もなかったように去っていった。

別荘の外では、野原英子が車を出して待っていた。安野香苗が後部座席に乗り込むと、翔太がぱっと笑顔を咲かせる。

『お母さん!』

「うん、翔太」

安野香苗は子どもの頭をくしゃりと撫で、やわらかく笑った。

香苗と翔太をアパートまで送り届けると...

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