第133章

そう言い終えると、安野香苗は病室を出た。

病室の中の空間を、江原司と翔太――二人だけに残して。

迷いなく出ていく背中を見送りながら、江原司の瞳の奥はさらに暗く沈む。胸の内に、苛立ちがじわじわと広がっていった。

まだ離婚したわけでもないのに。

あの女は自分を、まるで疫病神でも見るみたいに避ける。

腹が立って仕方ない。

けれど江原司は知らない。

これから先、彼の胸を抉る出来事は、もっと増えていくということを。

廊下で、安野香苗は静かに壁へ背を預けた。

病室の中からは、ときおり子どもの声が漏れてくる。聞こえるたび、何を考えればいいのか分からなくなった。

『安野香苗、あんたもここ...

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