第138章

『悪いけど、用事があるから先に失礼する』

 安野香苗は本気で腹が立ち、相手の手をぱしんと払いのけると、洗面所の外へ足早に出た。

 ――が、出た途端、正面から腹の出た男が歩いてくる。

 男は香苗を見た瞬間、目をぎらつかせた。遠慮もなく頭のてっぺんからつま先まで舐め回すように見てくる。粘ついた視線が肌にまとわりつき、香苗は生理的な吐き気を覚えた。

 そこへ、さっきまで引き留めてきた女同級生が追いかけてくる。

 相手の姿を認めた途端、女はぱっと笑顔を作った。

『大崎様、いらっしゃったんですね! こちら、前にお話しした私の同級生の安野香苗です。どうです? すっごい美人でしょう? 香苗、ほ...

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