第142章

江原司は誰かに肩を乱暴に揺すられて、ようやく目を覚ました。重いまぶたをこじ開けると、頭が割れるように痛い。

『起きた?』

安野香苗の声には、波が一切なかった。まるで赤の他人に向ける声だ。

『三十分。もう終わり。出てって』

江原司は頭を振り、起き上がろうとする。だが身体が言うことをきかず、やっとのことで上体を支えた。喉はからからで、声は掠れている。

『香苗……俺は翔太を諦めない。あいつは俺の息子だ』

安野香苗は、途方もない冗談でも聞かされたみたいに口角を吊り上げ、嘲るように笑った。

『あなたの息子? 江原司、覚えてる? 翔太のお母さんを、あなたが自分の手で精神病院に放り込んだのよ...

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