第143章

野原弁護士は相手に息をつく隙すら与えず、淡々と続けた。

「次に、相手方代理人が主張する『居所不定』なるものですが――まったくの言いがかりです」

そう言うと彼は、再び数枚の書類を差し出した。今度は明らかに、最初から用意してきた手札だった。

「1つ目。こちらは当方依頼人・安野香苗さん名義の資産証明です。母上の遺産として、相当額の信託基金と複数の不動産が残されています。経済的基盤は十分。『居候』というのは、子どもの世話の都合で一時的に選んだ住まいの一つにすぎません」

「2つ目。藤原グループ発行の雇用契約書および給与証明。安野さんは藤原グループ傘下、トップクラスの生物遺伝子研究所にて中核研究...

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