第146章

江原司は目の前の光景を見つめ、眉間に深い皺を刻んだ。顔色も、ひどく悪い。

安野月子は彼の姿を見た瞬間、まるで命綱を掴んだみたいに、泣きながら飛びついた。

「お義兄さん……やっと来てくれた……! お願い、姉さんに説明して! 姉さん、私が人を使って翔太を誘拐したって……そんなの、冤罪だよ! お義兄さん、私がそんなことするわけないじゃない……!」

息が詰まるほど泣きじゃくり、月子は全身で江原司に縋りつく。

だが江原司の身体は、ぴくりと強張っただけだった。いつものようにすぐ宥めることはせず、彼女の肩を掴んで、そっと距離を作る。

その視線は月子を越え、安野香苗の氷みたいに冷えた顔へ落ち、さら...

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