第148章

安野月子が連れていかれたとき、空はどんよりと灰色で、今にも雨が落ちてきそうだった。

彼女は完全に壊れてしまい、口から出てくるのは、何度繰り返しても同じ言葉だけ。

「違う……私じゃない……」

証拠は嘘をつかない。藤原京也の秘書から届けられた書類袋を受け取った瞬間、江原司の指先は震え、煙草に火をつけることすらできなかった。

壁に手をつき、スマホを取り出す。弁護士へ発信。声は、不気味なほど平坦だった。

『俺が持ってる安野月子に関する資料は全部、警察に提出してくれ。追加の証拠として』

通話を切った途端、身体から力が抜けた。司は壁伝いにずるずると滑り落ち、そのまま床に座り込む。

一方、安...

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