第149章

翔太は一瞬ためらい、安野香苗の顔をうかがった。

安野香苗は何も言わない。ただ、そっと息子の頭を撫でる。

それでようやく翔太はゆっくり歩み寄り、模型を受け取った。小さな声で言う。

『……ありがとう、お父さん』

言い終えても、翔太は安野香苗の手を離さなかった。見上げて、甘えるように言う。

『お母さん、帰ろ』

江原司はその場に立ち尽くし、二人の背中が遠ざかっていくのを見送った。胸の奥に、言いようのない味が渦巻く。

翔太を落ち着かせて寝かしつけ、ようやく手が空いた安野香苗は、次の一手に移った。狙うのは安野弘人。授賞式で質問してきた、レモンメディアの記者に連絡を入れる。

『手元にちょっ...

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