第153章

安野香苗はその書類を受け取ったものの、すぐには目を通さなかった。窓の外へ視線を投げると、街の車の流れが一望できる。

『お兄ちゃん、お姉ちゃん。私、公益医療基金財団を立ち上げたい』

振り返った彼女の瞳は、澄んでいて、揺るぎなかった。

『木山グループの名義で――それから、母の木山そらの名義でも。財団の最初のプロジェクトは、メッセンジャーRNAの標的修復に関する臨床試験へ資金支援を行うこと』

『お婆さんみたいに、希少疾患で苦しむ患者さんが、無料で治療を受けられるようにしたいの』

やりたいことは、ずっと山ほどあった。今、ようやく手が届く場所に機会があるなら――助けられる人を、増やすべきだ。...

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