第154章

研究が終わってから一週間後。

安野香苗は、海外での重要な仕事に出席するため飛ぶことになった。

ファーストクラスの窓側席。手には招待状。表情は、ほんのわずかに硬い。

『何を見てるの?』

隣の席に藤原京也が腰を下ろす。わざわざ砂糖なしのコーヒーを一杯、手にしていた。

安野香苗はそれを受け取り、眉と目元に重さをにじませる。

『大崎先生のことを考えてた。もし今日を見られたら、研究室に隠してたお酒、開けて飲んだと思う』

藤原京也は手元のフィナンシャル・タイムズを畳み、窓の外へ視線を投げた。

『あの人は、君がここで思い出に浸るより、壇上に立つ姿を見たかったはずだ』

少し間を置き、声を落...

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