第157章

『ずっと、あなたを待ってた』

『でも――もう、待たない』

周囲の空気が、ほんの一瞬だけ凍りついた気がした。理由もなく、場の温度が変わる。

安野香苗は自分の鼓動をはっきりと聞いた。何か言わなきゃと思うのに、喉の奥が塞がれたみたいで声が出ない。

長い沈黙の末、ようやく掬い上げた声は、ひどく乾いていた。

「先輩……時間が、必要です」

離婚したばかりで、子どももいる。次の結婚に踏み出せるかどうかだって分からない。何もかもが、まだ定まっていなかった。

「分かった」

藤原京也は追い詰めなかった。ただ、ふっと笑う。

「俺はいくらでも待てる。どれだけでも」

同じ頃――遠くアフリカの地で、...

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