第158章

『俺……』

藤原京也は口を開いた。喉がひりつくほど声は掠れているのに、肝心の言葉が見つからない。

安野香苗は首を横に振った。涙を指先で拭い、ゆっくり、けれど迷いなく彼へ歩み寄る。

目の前で立ち止まると、香苗はつま先立ちになり――自分から、彼の唇に触れた。

藤原京也の身体が、びくりと固まる。頭の中が真っ白になった。

次の瞬間、彼は主導権を奪い返す。香苗の後頭部を掌で包み込み、逃がさないように引き寄せて、キスを深くした。

待ちわびていたものを取り返すみたいに、荒く、貪るように。

どれほどの時間が過ぎたのか。ようやく唇が離れたとき、香苗の頬は赤く染まり、呼吸は乱れていた。彼の胸に額を...

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