第159章

薬剤がゆっくりと佐藤玲美の静脈へ押し込まれていく。安野香苗の手つきは終始ぶれなかったが、背中にはいつの間にか薄い汗が滲んでいた。

周防晨は病室のガラス窓の外に立ち、拳をきつく握りしめたまま、ベッドの上の母から一瞬たりとも目を離さない。

その隣で藤原京也が、ただ静かに彼の肩へ手のひらを置く。言葉はない。

いまは実験の要となる観察フェーズ。中央制御室のモニターには十のウィンドウが並び、佐藤玲美の生命兆候がリアルタイムで映し出されていた。

佐藤様はコーヒーを手にしたまま画面を凝視している。温かったはずのそれは、いつの間にか冷え切っていたのに、一口も飲んでいない。

若い博士課程の学生たちは...

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