第164章

K市の空港。

江原司はスーツケースを押しながら到着ロビーへ出てきた。もともと色白というほどでもなかった肌が、今はすっかり焼けていて、別人みたいに見える。

「江原様。お車、外に」

秘書が近づいてきて、声を落として言った。

「青野マンションへ」

江原司の声は、砂を噛んだみたいに掠れていた。

車はマンションの向かいの通りに停まった。江原司は窓を下げ、煙草に火をつける。けれど吸わない。ただ、遠くを黙って見ているだけだ。

黒いベントレーが視界に入った瞬間、彼の表情が、ほんのわずかに揺れた。

藤原京也がドアを開けて降り、片手に鞄を提げ、もう片方の手で翔太を引いている。

その隣を安野香苗...

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