第166章

安野香苗は車窓にもたれ、街灯が矢のように後ろへ流れていくのを眺めていた。

『藤原京也』

『ん?』

『夢みたい』安野香苗は小さく言った。

藤原京也は彼女の手を取る。指と指を絡め、逃げ道を塞ぐみたいに、きつく。

『夢じゃない。これは、お前が受け取っていいものだ』

藤原京也は最近とにかく忙しく、放課後の時間などほとんど残っていなかった。

安野香苗が書斎で資料を探していたとき、ふと一番下の引き出しを開けてしまう。

中には革張りのアルバムが一冊。めくった最初のページにあったのは写真ではなく、K市にある最高級の邸宅の実景比較図だった。どの写真にも、細部までびっしりと注釈が入っている。

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