第167章

エレベーターが地下駐車場に着き、安野香苗は車に乗り込んだものの、すぐにはエンジンをかけなかった。

スマホがぶるっと震える。藤原京也からのメッセージだ。

【家に着いたら連絡して】

その数文字を見た瞬間、胸の奥に残っていた苛立ちがすっと撫でられる。安野香苗は「うん」とだけ返し、エンジンをかけた。

翌日。

安野香苗が木山グループのオフィスで報告書を捌いていると、内線が鳴った。

『安野様。1階の受付からです。藤原さんのおばさまと名乗る女性がいらしてまして……佐藤晴美様です。ご予約はございませんが、安野様にお会いしたいと』

安野香苗はペンを置き、指先で机をとん、とん、と軽く叩く。

藤原...

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