第168章

「毎年あんたらの園にいくら寄付してると思ってんの? それがこの教育? 私生児にうちの子をいじめさせるわけ? 今日ここで片をつけないなら、この幼稚園、明日には潰してやるから!」

 安野香苗が勢いよく職員室へ踏み込み、翔太を乱暴なくらい強く抱きしめた。腕の中の小さな体が震えている。頬には赤く腫れた傷。

「お母さん……」

 翔太が香苗の顔を見上げた瞬間、こらえていた涙がぽろぽろと大粒で落ちた。

「誰にやられたの?」

 そのとき、入口から低い声が落ちた。

「……誰がやった」

 大きな声ではない。なのに氷みたいに冷たく、室内の空気が一気に沈む。藤原京也だった。

 怒鳴り散らしていた女は...

ログインして続きを読む