第176章

空野凛と木山水子の言い争いは収拾がつかず、バーの中でやけに耳障りだった。

安野香苗はうるささにこめかみがズキズキして、眉間を揉む。

『もうやめて。やめなさい』

それから藤原京也を見た。瞳の奥に、うっすら疲れが滲んでいる。

『送って。もう遅いし、帰りたい』

「分かった」

藤原京也は即座に頷いた。

彼は身をかがめ、安野香苗の肩に掛かっていた上着をきゅっと寄せてやる。立ち去る直前、空野凛へ目だけで合図を投げた。

『水子はお前に任せる。ちゃんと家まで送れ。気をつけろよ』

「なんでだよ!」

「なんでよ!」

空野凛と木山水子が同時に叫び、次の瞬間には互いを睨み合う。

藤原京也は相...

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