第177章

「――あいつが、あんたの服を自分で着替えさせたの?」

「違う。店員にやらせた。でも、あいつはやっぱりクソ!」

電話の向こうで吠えているのは木山水子だ。安野香苗は出社したばかりで、デスクにバッグを置いたところだった。朝イチから元気だな、と内心ため息をつきつつ、声だけは優しくする。

「はいはい。落ち着いて。あんな男のために怒るの、もったいないよ。あとで私から言って、ちゃんと謝らせるから」

実際、二人の間に決定的な何かがあったわけじゃない。最悪は避けられた――それだけでも、十分だ。

「謝ったって意味ある? 貞操は守れたけど、精神が大ダメージなんだけど!」

水子はむくれた声で、ぐずぐずと...

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