第178章

安野香苗はその数文字を見つめた途端、なぜだか頬がかっと熱くなった。結婚する、とは二人で決めた。けれど――結納だの、贈り物だの、そういう話は一度もきちんと口にしていない。

資金の目処は立ち、会社もようやく軌道に乗り始めた。皆が新しい技術に取りかかったのに、研究開発センターの空気は日を追うごとに重く沈んでいく。

技術的な壁が、どうしても越えられない。

「前に出した案、全部ダメでした。データもずっと不合格のままです。でも、原因が分からなくて」

その報告に、安野香苗は思わず眉を寄せる。

「ほかの手は? 突破口になりそうなところ、もう一回洗い出して。別の原因も探してみて」

言うのは簡単だ。...

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