第179章

観覧車を降りたあと、藤原京也はそのまま車を出さず、細い脇道へハンドルを切った。旧天文台の下で停車する。

――大学の頃、二人でよく遊びに来た場所。

『ここ、覚えてたの?』

安野香苗は意外そうに目を瞬かせた。自分はもう、ずいぶん長いこと足を運んでいない。

『覚えてる』

京也は彼女の手を取って降ろす。後部座席のチャイルドシートでは、翔太がすやすや眠っていた。

京也は背後から香苗を抱き寄せ、何かを彼女の手首に留めた。

香苗が目を落とす。シンプルなデザインのブレスレット。

『唯一無二のお前の印だ』

顎を彼女の頭頂に預け、低い声で囁く。

言葉にできない感情が胸に溜まり、香苗が口を開き...

ログインして続きを読む