第189章

『子どもを選ぶ。モノはくれてやる』

安野香苗は一片の迷いもなく言い切ると、手にした黒い暗号化ハードディスクを掲げた。『あんたたちが欲しいのは、これ。それと木山グループがこの市場から手を引くこと……そうでしょう?』

来る前から腹は決めていた。目の前の連中を見ても、胸の奥に恐怖は一滴も湧かない。

マスクの男の目に、わずかな驚きが走る。ここまであっさり差し出すとは思っていなかったのだろう。男は短くうなずいた。

『この中の中核技術は全部渡す。今後この技術を使って、産業関連の薬も二度と作らないと約束する』

安野香苗はマスクの男を真っすぐ見据え、一語一語を叩きつける。――重く、硬く。

『条件...

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