第29章

「私が変わったって言うのね、江原司。自分の胸に手を当てて言ってみなさいよ。あなたは変わってないって?」

安野香苗は、息子がいまだに安野月子のことを「お母さん」と呼んでいる現実を思い出すだけで、胸が抉られるように痛んだ。

そして――その元凶に、優しい声など出せるはずもない。

「私が戻ってきてから、あなたが何をしてきたか。全部、この目で見てる。そんなあなたに、私を問い詰める資格があるの?」

江原司は言い返されて怯んだ。唇を湿らせ、まだ取り繕おうとする。

「香苗、違うんだ。君が思ってるような話じゃ……」

「どこが、どう違うの?」

香苗は一歩も退かない。怒りの刃が、言葉の端々に滲む。

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