第30章

安野香苗には、どうしても理解できなかった。

同じ「娘」なのに――父の胸にいるのは、安野月子ただ一人。

あまりに一方的で、あまりに露骨で、いつしか彼女は疑うようになった。自分は本当に、この男の娘なのだろうか、と。

親子鑑定までした。

けれど出た結果は、彼女を救うどころか、さらに突き落としただけだった。

「お父さん……母のこと、覚えてる? 昔、一度でも私を抱いて……大事にしてくれたこと、あったでしょう……」

最後まで言い終える前に、安野弘人は露骨に顔を背けた。

聞く価値もないと言わんばかりに。

そして、冷え切った声で切り捨てる。

「くだらん話はいい。いま問題なのは、お前が金田家...

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