第34章

安野香苗は、意を決して口を開いた。翔太に、迷いなく拒まれるのが怖くて仕方ない。

けれど予想に反して、翔太は少しだけ逡巡したあと――ぱっと顔を明るくして頷いた。

「……うん。いいよ!」

安野月子は「安野香苗は悪い人」だと言っていた。

それでも翔太が彼女から感じるのは、濃いほどのぬくもりと、まっすぐな愛情だけだった。

だからこそ、翔太は彼女にがっかりしてほしくなかった。

安野香苗は緊張で唇をきゅっと結び、さらに小さな願いを重ねる。声はかすかに震えていた。

「翔太……あなたと私、二人だけの絵を一枚描いて、私にくれない?」

翔太は拒まない。ただ、きょとんとして首を傾げた。

「どうし...

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