第51章

翌朝、安野香苗は早起きして翔太の朝食に付き合ってから、会社へ向かった。

昨夜、ホテルで起きたことが、何度も何度も脳裏によみがえる。

会社のビルの前に着いても、安野香苗はまだ上の空だった。

そのせいで、うっかり誰かにぶつかってしまう。

「すみません、すみま――」

顔を上げ、相手が誰なのかを見た瞬間、安野香苗の声は喉の奥でぴたりと止まった。

藤原京也は、彼女の気が抜けたような顔を見て、ふっと眉を上げる。

「香苗、何考えてるんだ?」

頭上から降ってきた男の声に、安野香苗の頭は、どん、と真っ白になった。

人間というのは不思議なもので、考えるなと自分に言い聞かせるほど、かえってそのこ...

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