第53章

あの家を出たあと、安野香苗の気分は沈んでいた。

藤原京也が彼女を送り届ける車中、香苗が黙り込んでいるのを見ると、彼の瞳の奥に、気づかれない程度の不安がいくつも走る。

「今は当時の件の間接的な証人が見つかったんだ。真相もすぐ出る。香苗の潔白だって、ちゃんと証明できる」

その言葉が沈黙を破り、安野香苗は顔を向けた。

「ありがとう。あなたがいなかったら、私、今もずっと騙されたままだったと思う」

金田智哉の一件について、当時の自分は何も知らなかった。

嵌められたのだという感覚だけはあった。けれど、裏で糸を引いていた『本当の犯人』が誰なのかは、分からないままだった。

――今日、知ってしま...

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