第54章

安野香苗が口を開いた。

「つまり、あのときのこと……全部、最初からあんたたちの筋書きだったのね!? 安野月子の身代わりにするために、私を殴って気絶させて部屋に運び込んで……安野家の人間に『金田智哉を傷つけたのは私』だと思わせた。安野弘人、どこまで残酷なの。父親を名乗る資格、あるの!」

もう抑えきれない。胸の奥に溜め込んできた怒りが、今さら蓋をこじ開けた。

崩れた小動物みたいに目を真っ赤にして、香苗は弘人へ詰め寄る。逃げ場のない答えを引きずり出すつもりで。

安野弘人の顔が一瞬だけ強張り――それもすぐ、霧みたいに消えた。

実の娘に責め立てられているというのに、弘人はどこまでも他人事の顔...

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