第73章

 その光景を目にした瞬間、安野香苗はわずかに目を見張った。こういう展開、恋愛小説では何度も見かけたことがある。

 まさか今日、それが自分の身に降ってくるなんて――

 案の定、次の瞬間、向かいに座る藤原奥様が口を開いた。

 「このカードに500万入っています。安野さん、京也から離れてちょうだい」

 口調こそ穏やかだったが、そこには有無を言わせぬ拒絶があった。安野香苗は一瞬言葉を失い、それからおかしさがこみ上げてきた。

 「藤原奥様。まさか私と藤原様が付き合っているとお思いなんですか?」

 この人、まさか自分と藤原京也がそういう関係だと本気で思っているのだろうか。

 まさかの修羅場...

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