第76章

友だちの気遣いが、安野香苗の胸をじんわり温めた。

『ほら、平気だってば。心配かけたくなくて言わなかっただけ』

それを聞いた野原英子は、呆れたようにちらりと横目をくれる。

『ほんっと、口だけは達者なんだから!』

香苗はへらっと愛想笑いをしてみせる。英子は道すがらわざわざ買ってきたものを袋から取り出した。

『はい、これ。香苗のぶん。早く食べな』

病院で午後まで付き添ってもらい、医師が再度診察に来た。検査の結果、大きな異常はないとのこと。

これ以上病院にいる気にもなれず、香苗は退院することにした。

英子が心配そうに眉をひそめる。

『藤原京也から聞いたよ。昨日、気ぃ失ったんでしょ。...

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