第84章

安野香苗の、あの柔らかな眼差しと真正面からぶつかって。

翔太は唇をきゅっと結び、迷いながらも小さく頷いた。

しばらく病室で香苗のそばにいさせたあと、江原司が翔太を連れて出ていった。

ほどなくして看護師が薬を持ってきて、安野香苗がそれを飲み込むのを見届ける。

午後のあいだ、香苗はほとんど眠り続けた。付き添いの介護士が何度か様子を見に来ても、呼びかけに目を覚ますことはない。

最初は「疲れているだけだろう」と思っていた。けれど、夜になっても状況は変わらなかった。

介護士は胸騒ぎを覚え、迷った末に藤原京也へ電話を入れた。

しばらくして男が病室に到着すると、介護士ははっと立ち上がる。

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