第86章

小柄な看護師は首を横に振った。『きのうの昼、ある人が私のところに来て……安野さんのお薬をすり替えるだけで、母の治療費を全部払ってくれるって。だから……私、引き受けました』

言い終えた途端、彼女はぶるぶると震えだす。

今にも泣き出しそうな顔だった。

『向こうからわざわざお前を探してきたんだ。相手が誰かも分からないのか?』

男の声が数段高くなる。不機嫌さが滲んだ。

看護師はこくこくとうなずく。『本当に分かりません。帽子にサングラスで、顔が見えないくらい隠してて……女の人だってことくらいしか』

『それに、あのときは私も焦ってて、顔なんて見ようとも……』

看護師の言い分を聞いて、藤原京...

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