第88章

声が落ちた瞬間、安野月子の顔色が変わった。

「……何のこと? 私、さっぱり分からないんだけど」

どうせ、しらばっくれると思っていた。安野香苗は冷たく笑う。

「ここには私たちしかいないのよ。何を言ってるかなんて、あんた自身がいちばん分かってるでしょ。看護師を買収して、私に薬を盛った。――私を死なせたかったんでしょう」

藤原京也から薬を盛られたと聞かされたときも、安野香苗は真っ先に安野月子を疑ったわけではなかった。

この女が、自分が精神病院を出てからというもの、卑劣な手ばかり使ってきたのは知っている。

それでも、ここは病院だと思っていた。

いくら安野月子でも、さすがに病院の中までは...

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