第161章

酒の臭いをプンプンさせた二人の男が、互いの首を絞め上げながら取っ組み合いを演じていた。

もみ合う拍子にテーブルが激しく揺れ、赤ワインのボトルが派手に引っくり返る。

溢れ出した深紅の液体は契約書を瞬く間に染め上げ、澤村陽花のハンドバッグはおろか、テーブルを囲んでいた三人にまで容赦なく降り注いだ。

澤村陽花は弾かれたように立ち上がり、慌ててバッグの中のUSBメモリを確認する。

「最悪! 警備員、警備員はどこなの!」

編み込み仕様のバッグは無惨にもワインを吸い込み、中のUSBメモリもぐっしょりと濡れてしまっている。

周防浅奈は契約書を拭くふりをしながら、さりげなく被害を拡大させていた。...

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