第230章

病院を後にした時、周防浅奈は深い沈黙に包まれていた。

堀江山吾には、もう生きる気力が残っていなかった。彼を辛うじて現世に繋ぎ止めているのは、娘の仇を討つという執念だけだ。

彼はすでに弁護士を通じて公正証書を作成し、会社を周防浅奈に譲渡していた。一銭の対価も求めずに。

近藤永一は、冷え切った周防浅奈の手を握りしめた。

「俺にできることはあるか?」

周防浅奈は彼の方を振り向き、鼻を強くすすり上げた。

「あなたが健康でいてくれれば、それだけでいい。何もいらないわ」

彼女は近藤永一の肩に頭を預けた。視界が涙で滲み、ぼやけていく。

「永一、親ってね、みんな子供を愛しているのよ。私の両親...

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