第25章

周防浅奈の言葉に、警察官も訝しげな表情を浮かべた。

一晩にわたる取り調べで、近藤時弥は一貫して主張していたのだ。周防浅奈は元恋人であり、近藤永一によって無理やり婚約させられたのだと。

だが今の様子を見るに、近藤時弥は周防浅奈だと気づいてさえいない。これで恋人同士だと言うのか?

その時、伊東忠成が歩み寄り、近藤永一に耳打ちした。

「近藤夫妻が到着しました」

近藤永一は鼻で笑った。

「通せ」

彼は周防浅奈の手をきつく握りしめ、周防浅奈もまた、その手を握り返した。

近藤時弥の母である浅川文月は、慌てて一枚の紙を取り出した。

「刑事さん、昨日は気が動転していてすっかり忘れていたんです...

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