第253章

周防浅奈は決して蘆澤家の人間を信用していないわけではない。ただ、どうしても腹の虫が治まらないだけだ。

『百草書』には確かに複数の人間の筆跡が残されている。だが、その中でも蘆澤紫雲が記した内容が最も多く、かつ最も詳細であり、彼女がどれほど心血を注いでいたかは一目瞭然だった。

現在、その蘆澤紫雲は昏睡状態に陥っている。周防浅奈としては、おいそれと彼女の遺産とも言えるこの書物を引き渡すわけにはいかなかった。

ましてや、蘆澤家は何十年もの間、表舞台に姿を現していない。浅奈自身、幼い頃に蘆澤正雲に会ったような微かな記憶はあるものの、幼子の記憶など当てにならないし、大勢いる蘆澤家の誰に会ったのかさ...

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