第270章

「甘菜!」

夏川愛蘭は慌てて娘を制止した。

「何をするつもりなの?」

「お母さん、あの指輪はお父さんがお母さんに贈ったものよ。当主の証なの。それを春香さんが持ち去るのを、黙って見ていろと言うの?」

蘆澤甘菜の目元は赤く染まっていたが、周防浅奈を見つめる瞳には悲壮な決意が宿っていた。

「周防さん、お願いします。私に二千万貸してください。父の指輪を買い戻したいんです」

「まずは座って落ち着いて。二千万の指輪ってどういうこと?」

周防浅奈は本来なら立ち去るつもりだったが、その言葉を聞いて足を止めた。むしろ、腰を据えて話を聞く気になった。

蘆澤甘菜から、この家の内情を探れるかもしれな...

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