第273章

あたりは静まり返り、聞こえるのは波の音と鳥のさえずりだけだ。

誰もが緊張した面持ちで近藤永一を見つめている。

たとえ浪川市の人間でなくとも、『近藤グループ』の名は轟いている。

さらに近藤の背後に控えるボディガードたちの凶相を見れば、カタギでないことは明らかで、誰一人として口を開こうとはしなかった。

彼らの怯える様子を見て、周防浅奈は密かに胸を躍らせた。これが「後ろ盾」があるという感覚なのか。

彼女は先ほどの蘆澤春香を真似て顎をしゃくり、不満げに手を差し出した。

「ほら、早くしてよ。さっき言ったでしょ、契約精神が大事だって? たかが二千万、おばさんなら余裕でしょ」

「それからそっ...

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