第5話

ゆっくりとエレベーターの扉が開き、私は目を瞠った。目の前の光景に、まったく心の準備ができていなかったのだ。

伊藤大樹が、金髪の女性を壁に押し付けていた。彼女の黒いミニドレスは腿までたくし上げられ、二人の体はぴったりと密着している。女は戯れ言を交えながら甘い笑い声を漏らし、一方の大樹はスーツの上着を床に散乱させ、白いシャツのボタンを半分ほど開けていた。

胃がむかつき、思わずエレベーターのドアフレームを掴んで体を支える。自由な方の手は、無意識に激しく鼓動を打つ胸を押さえていた。これは、私の知っている大樹ではなかった。

金髪の女が、その視線の隅で私を捉え、唇に遊び心のある笑みを浮かべ...

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