第115章

「謙志兄さん、どう? 似合う?」山下心はくるりとその場で一回転し、期待を滲ませた瞳で黒田謙志を見つめる。

言葉の端々で、山下心は中村奈々へ視線を投げることも忘れない。それは誇示のようであり、同時に挑発のようでもあった。

しかし、黒田謙志はこれといった反応を示さず、ただ淡々と告げる。

「悪くない」

期待していた反応が得られず、山下心は瞬時に不機嫌さを募らせた。

だが表面上は優雅で甘い笑みを崩さず、中村奈々に向き直る。

「中村さん、まだ選ばないの? まさか、高すぎると思ってる? 大丈夫よ、うちの謙志兄さんは気前がいいんだから。ここで会ったのも何かの縁だし、きっと払ってくれるわ! ねえ...

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