第194章

黒田謙志の瞳が、次第に深く、複雑な色を帯びていく。だが、彼女の腰に回されたその手が離れることはなかった。

「中まで送る」

有無を言わせぬ強引さで、彼は彼女を抱え込むようにしてレストランへと足を踏み入れた。

中村奈々の座る席からは、ちょうど二人の様子が手に取るように見えてしまった。

レストランに入ってくるなり、森田美波は黒田謙志の懐にすっぽりと身を預けていた。頬を上気させ、か弱く艶めかしいその姿は、男なら誰しも庇護欲を掻き立てられるに違いない。

だが奈々は、ただ淡泊な視線を一瞥投げただけで、何事もなかったかのようにふいと目を逸らした。

水原瀬那が声を潜めて耳打ちしてくる。「あれって...

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