第208章

黒田謙志は、仕事中でも一切容赦がない。投げかける言葉は、どれも鋭く容赦がなかった。

中村奈々は、そんな彼の邪魔をしたくなくて、スマホを取り出した。バイク便でも呼んで、一度家に帰って着替えを取ってこようと思ったのだ。

ところが、こちらがちょうどスマホの画面を開いたところで、秘書が服を抱えて部屋に入ってきた。

「黒田社長、こちら、ご用意していたお洋服です」

黒田謙志が視線を上げ、中村奈々の方へ顎をしゃくる。それを合図に、秘書が服を彼女の前に差し出した。

「こんなに早く用意してくれてたんですか?」

てっきり、彼が意地悪で何もしてくれないのだとばかり――。

自分の浅はかな考えに、奈々は...

ログインして続きを読む